撤退学研究ユニットが、書籍『山岳新校、ひらきましたー山中でこれからを生きる「知」を養う』を出版しました。
一度走り出したものは、止められない止まらない。
今必要なのは、惰性に流されず、慣性に埋没しない力ではないか?
「加速する社会からの撤退」をキーワードに、豊かな自然と歴史文化が根づく奈良・奥大和の地で、これからの人生を考える学びの場「山岳新校」。
この取り組みを支える現状分析と思想=論考に加え、学校での実践の様子を収めた、記録集。
ぜひお手に取っていただき、「撤退学」を深めていただければ幸いです。
『山岳新校、ひらきました 山中でこれからを生きる「知」を養う』
奈良県立大学地域創造研究センター撤退学研究ユニット・編
刊行:エイチアンドエスカンパニー(H.A.B)
本体:1800円+税
発売:2023年5月25日
>エイチアンドエスカンパニー(H.A.B)ウェブサイト
https://habookstore.shop/items/645ac68c7b8f03003d1fc3b2
>各種オンライン書店からもご購入いただけます
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784910882031
はじめに
学びの究極ー鬼を脱落させる術の修得(堀田新五郎)
地域の縮小にどう向き合うかー「縮充社会」の実現にむけて(作野広和)
how toではなく、実質的な学びを(対談:作野広和×堀田新五郎)
若者と文化的撤退ー都市から撤退できない私たちの小さな実践(松岡慧祐)
[PROGRAM1]みちのり
撤退的に生きること、創造的に生きること(梅田直美)
不登校の歴史と撤退ー語る言葉と生のあり処を探す場所をつくる(林尚之)
撤退的に生きるためにーオルタナティブな学びの場の可能性(対談:林尚之× 梅田直美)
つまらないゲームに乗らないための術ーただ正面対決だけしている場合ではないが逃げるだけでも息切れする(伊藤洋志)
みちのりレポート 「みちのり」とは? 2022年開講レポート
[PROGRAM2]山學院
山村で気づく「クリエイティブ」と「アニミズム」(対談:坂本大祐×青木真兵)
山學院レポート 「山學院」という場 2022年開講レポート
[PROGRAM3]芸術学校
つながりの中で捉える「芸術学校」(西尾美也)
奥大和における芸術実践と「最後」の練習(西尾美也)
おわりに
青木真兵 (アオキシンペイ) (著/文)
1983年生まれ、埼玉県浦和市に育つ。「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター。古代地中海史(フェニキア・カルタゴ)研究者。博士(文学)。社会福祉士。2014年より実験的ネットラジオ「オムライスラヂオ」の配信をライフワークにしている。2016年より奈良県東吉野村在住。現在は障害者の就労支援を行いながら、大学等で講師を務めている。著書に『手づくりのアジール』(晶文社)、妻・青木海青子との共著『彼岸の図書館──ぼくたちの「移住」のかたち』(夕書房)、『山學ノオト』シリーズ(エイチアンドエスカンパニー)などがある。
梅田直美 (ウメダナオミ) (著/文)
奈良県立大学地域創造学部教授。専門分野は社会学。「孤立」に関する言説史研究と、何らかの「生きづらさ」を経験した人が自身の経験・問題意識を軸として起業する事例について、「親密圏と公共圏が交差する場」という視点から実践研究を行っている。著書に、「戦後日本の団地論にみる『個人主義』と『家族中心主義』―『孤立』をめぐる言説史の視点から」(中河伸俊・赤川学編『方法としての構築主義』所収、勁草書房)、林尚之との共著『OMUPブックレットNo.59 自由と人権―社会問題の歴史からみる』(大阪公立大学共同出版会)、編著『OMUPブックレットNo.62 子育てと共同性―社会的事業の事例から考える』(大阪公立大学共同出版会)などがある。
坂本大祐 (サカモトダイスケ) (著/文)
奈良県東吉野村に2006年移住。2015年、国、県、村との事業、シェアとコワーキングの施設「オフィスキャンプ東吉野」を企画・デザインを行い、運営も受託。開業後、同施設で出会った仲間と山村のデザインファーム「合同会社オフィスキャンプ」を設立。2018年、ローカルエリアのコワーキング運営者と共に「一般社団法人ローカルコワークアソシエーション」を設立、全国のコワーキング施設の開業をサポートしている。著書に、新山直広との共著『おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる』(学芸出版社)がある。奈良県生駒市で手がけた「まほうのだがしやチロル堂」がグッドデザイン賞2022の大賞を受賞。
作野広和 (サクノヒロカズ) (著/文)
島根大学教育学部社会科教育専攻教授。1968年島根県松江市生まれ。広島大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。同大助手,島根大学准教授を経て,2014年より現職。専門は農業・農村地理学,過疎・中山間地域論,GIS。総務省過疎問題懇談会委員,地域の暮らしを支える地域運営組織に関する調査研究会委員,国土審議会特別委員,農林水産省鳥獣害対策アドバイザー,島根県中山間地域研究センター客員研究員等。島根県,兵庫県を中心に,市町村レベル,小学校区・地区レベル,集落レベルの地域づくりに参画。島根県江津市,出雲市佐田町,邑南町,奥出雲町,飯南町,兵庫県佐用町に研究室の分室「ラボ」を設置し,住民との協働による地域づくりを実践中。
西尾美也 (ニシオヨシナリ) (著/文)
1982年奈良県生まれ。美術家。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。文化庁新進芸術家海外研修員(ケニア共和国ナイロビ)、奈良県立大学地域創造学部准教授などを経て、現在、東京藝術大学美術学部先端芸術表現科准教授。装いの行為とコミュニケーションの関係性に着目したプロジェクトを国内外で展開。ファッションブランド「NISHINARI YOSHIO」を手がける。近年は「学び合いとしてのアート」をテーマに、様々なアートプロジェクトやキュレトリアルワークを通して、アートが社会に果たす役割について実践的に探究している。共著に『拡張するイメージ』(2023年、亜紀書房)、『ケアとアートの教室』(2022年、左右社)、『アーバンカルチャーズ』(2019年、晃洋書房)などがある。
林尚之 (ハヤシナオユキ) (著/文)
大阪公立大学現代システム科学研究科特任准教授、奈良県立大学客員教授。専門は日本近現代史。主に、近現代日本の主権・人権に関する研究、知性・教育と共同性に関する研究を行っている。主著としては、『主権不在の帝国ー憲法と法外なるものをめぐる歴史学』(有志舎、2012年)、『近代日本立憲主義と制憲思想』(晃洋書房、2018年)、『立憲主義の「危機」とは何か』(すずさわ書店、2015年、共編著)、『OMUPブックレットNo.59 自由と人権―社会問題の歴史からみる』(大阪公立大学共同出版会、2017年、共著)、『近代のための君主制ー立憲主義・国体・『社会』』(大阪公立大学共同出版会、2019年、共編著)などがある。
堀田新五郎 (ホッタシンゴロウ) (著/文)
奈良県立大学教授。専門は政治思想史。『政治思想と文学』(共編著)、『撤退論』(分担執筆)。世のしがらみと組織のプレッシャーとやむにやまれぬ思いから、撤退学を始める。日本の失われた10年は、20年となり30年となった。何の我慢大会? そろそろ東京一極集中の力学、惰性の力学から撤退しませんか? コードを変えましょう。東京在住のあなた、このままではマズイよね、そう思いながら満員電車で疲弊する日々を続けてたりしていませんか?であれば、1度出ちゃいましょう。たとえば、吉野の山里とかに。でもって、つらつら考えましょう。人類と自分の来し方行く末について。撤退は敗北ではなく、知性の証しですから。きっと、楽しい。
松岡慧祐 (マツオカケイスケ) (著/文)
奈良県立大学准教授。専門は社会学。主著に『グーグルマップの社会学―ググられる地図の正体』(単著、光文社新書)など。1982年岡山県生まれ、香川県育ち。17歳の時にフェリーに乗って遊びに来た大阪のアメリカ村に魅せられ、大学進学から22年間、大阪に住み着き、古着屋をめぐり続ける。今のところ年に1回、妻と沖縄の離島を旅することが、都市からの唯一の撤退。
伊藤洋志 (イトウヒロシ) (著/文)
個人のための仕事づくりレーベル「ナリワイ」主宰。1979年生まれ、香川県出身。京都大学農学部森林科学専攻修士課程修了。個人が身一つで始められ頭と体が鍛えられる仕事をナリワイと定義し、研究と実践を行う。主な著作に『ナリワイをつくる』『イドコロをつくる』(いずれも東京書籍)。「遊撃農家」などの個人のナリワイとチーム活動による野良着メーカー「SAGYO」のディレクター、「熊野マウンテンビル」運営責任者などの活動に加え、タイアカ族の山岳村落の学術研究プロジェクトにも参画する。
仲子秀彦 (ナカコヒデヒコ) (著/文)
1993年奈良県生まれ奈良県育ち奈良市在住の29歳。大学受験の際、まだ離れてもいないのにホームシックになり、第一志望だった沖縄行きをやめて奈良県立大学に通う。現在、平日は奈良県内の村役場の職員として働き、休日には畑で野菜を作ったりバンドをしたりしながら、妻と2人の子どもとドタバタ楽しく暮らしている。
中森一輝 (ナカモリカズキ) (著/文)
三重県名張市出身。大阪で10年間サラリーマンとして働いた後、2020年に地元名張市にUターン移住。移住後はフリーランスカメラマンとしての活動と並行して、合同会社オフィスキャンプ(奈良県東吉野村)が手掛けている地方行政のまちづくり関連事業や企業ブランディングなど、多岐にわたるプロジェクトに携わり、進行管理・広報PR・事務全般を担っている。都市部で働くサラリーマンとしての経験をベースに、地方のフリーランスクリエイターの世界で「越境人材」としての働き方・生き方を模索している。
八神実優 (ヤガミミユウ) (著/文)
大学卒業後、(株)リクルートキャリアに入社し、新卒採用・人事を担当。2019年より経済産業省に出向、科学技術イノベーション促進のための産学連携業務を推進。産学官の若手コミュニティの立ち上げや、霞が関初の試みで、若手だけの審議会を企画・運営。2021年(株)リクルートに出向帰任、管理会計を担当。2022年(株)リクルートを退職し、リジェネラティブな事業を構想中。コロナ前は毎月のように様々な地域を訪れており、現在は地域と都市の二拠点生活を模索している。