奈良民俗芸能研究ユニット
奈良民俗芸能研究ユニット
RESEARCH UNIT

奈良民俗芸能研究ユニット

研究テーマ
文化とコミュニティ維持のための村落・都市共創システムの構築: 人口流出や高齢化などによって民俗文化の衰退は加速化している。本研究では、奈良県の民俗文化、特に民俗芸能に焦点を当て、その維持・継承のための実効性のある方法を実践的に検証し、汎用性の高いモデルの構築を行う。当初は吉野郡十津川村の盆踊りを対象とするが、徐々に対象地域や芸能の種類を広げてゆく。
メンバー
研究代表者
ラナシンハ・ニルマラ(奈良県立大学 准教授)
研究ユニット員

堀田 新五郎(奈良県立大学 教授)

中川 眞(大阪公立大学都市科学・防災研究センター 特任教授)

西尾 美也(東京藝術大学 准教授)

森本 仙介(奈良県文化・教育・くらし創造部文化財保存課 主査)

研究補助員

設置期間
2022年11月16日〜2027年3月31日
Summary
研究概要

研究概要

 本研究の目的は、過疎地における民俗芸能の持続的な継承のために、都市と当該村落が連携して新たな担い手を創出するシステムを構築することにある。芸能の安定的継承はコミュニティの文化的アイデンティティだけではなく、コミュニティそのものの維持に貢献する。しかし過疎地には余力がない。本研究では都市住民が参入できるシステムを構築し、村落・都市両住民によって貴重な文化とコミュニティの消滅を未然に防ぐ試みを提案、実践する。
 本研究での当初の対象となるのは奈良県吉野郡十津川村の盆踊りである。この盆踊り(大踊)は1989年に国の重要無形民俗文化財に指定され、2枚の舞扇を巧みに操って20種類以上の踊りを一晩で演じる風流系の盆踊りとして名高く、文化財として貴重である。十津川村ではこれまで教育委員会や踊り保存会によって子どもや若年層に教えるなど、伝承への様々な努力が払われてきたが、高齢化、少子化の波に対応できず、万策尽きた状態となっている。その対策には新たな視点、戦略が必要である。
 そこで本研究では、都市住民との協働によって芸能の持続的な存続をめざす手法を実践的に解明することとした。それは都市部の市民を担い手にするという、大胆な転換を軸とする。その試みは2015年に大阪市内で大字武蔵の踊りの稽古の会として始まったが、奈良県立大学においても2021年にCHISOU事業との共同で大字西川地区の踊りを習得するワークショップが開始され、2022年の豆名月(10月)の踊りには、県立大学生が参加した。近年、滋賀県高島市朽木古屋の六斎念仏踊りや奈良県五條市大塔の篠原踊りが、都市住民の習得によって復活するなどの動きが出てくるなど、民俗芸能は地元のものという固定観念が揺らぎつつある。先行研究に乏しいなか、試行を重ねながら、現場への関わりを深く行うのが本研究の特徴である。
 本研究の意義は、「村落・都市共創システムの構築」という新たな概念を民俗研究に持ち込むこと、さらにそれをモデル化することによって、全国の同様の問題を抱えている民俗芸能の現場にフィードバックできることなどを挙げることができる。