ブックタイトルnarapu 09

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概要

narapu 09

Introduction教員紹介モットーは“勇気”地域創造学部准教授亀山恵理子専門分野:国際開発協力論、インドネシア地域研究担当科目:グローバル共生論、地域研究の方法趣味など:歩くこと、車窓を眺めること愛読書:須賀敦子全集(河出文庫、2007年)プロフィール学生時代にインドネシア語を専攻し、その後インドネシア地域研究と開発学を学びました。大学院在学中から足かけ10年インドネシアと東ティモールで開発協力の仕事にたずさわり、2010年に本学に着任しました。教員になってからもそれらの地域を訪れ、人々から話を聞かせてもらい、紛争や自然災害後の社会再建と「支援」のあり方について考えています。最近は、通訳や翻訳を行う立場で、映画の国際共同制作にもかかわっています。近年の研究私の研究の大きなテーマは「開発」です。開発を定義することは難しいのですが、当面開発を「よりよい変化」とするならば、開発を考える際に重要なのは、その変化が一体誰にとって、どのような意味において、なぜよりよいのかを深く知っていくことです。国境を越えて展開する国際開発には、国際機関や他国の政府やNPOなどの民間団体など多くのアクターがかかわります。私は地域を内在的に理解することを特徴とする地域研究のアプローチで、国際開発のあり方について研究しています。これまでに大きく2つの研究を行いました。ひとつは、紛争後の東ティモールの再建過程で現地のアクターが果たす役割についての研究です。24年間のインドネシアによる支配を経て2002年に正式に独立した東ティモールの再建には、国連をはじめとする国際的な援助機関が多くかかわりました。国際開発ではそれらの活動に光が当てられがちですが、実際には日本で地域創造に取り組む組織があるように、現地には現地で頑張っている組織や人が存在しています。研究では東ティモールのNGOとカトリック教会組織の活動についてインタビュー調査を行い、それらの活動が再建過程をいかに支えたのかを考えました。もうひとつは、津波被災後のインドネシア・アチェで行われた国際的な支援活動を地域の文脈からとらえなおす研究です。2004年に大津波に見舞われたアチェには多くの支援団体がインドネシア国内外からやってきました。私自身も日本の支援団体の一員として、現地で約2年間復興事業にたずさわりました。研究では、当時自分がかかわった海岸部の植林を主な内容とする地域防災事業が、地域社会ではどのように意味づけられ、また生活の中に位置づけられていたのかを、事業での経験とその後現地を訪れて行ったインタビュー調査をもとに考えました。これら2つの研究に共通するこだわりは、その地域の人々の目には何がどのように映っているのか、どのような社会を望んでいるのかを可能な限り理解したいということです。開発研究の目的は「開発とは何か」を考えることですが、私はその際に個々の地域や一人一人の主観に目を向けてそこから開発を考え続けていきたいと思います。愛読書須賀敦子全集(河出文庫、2007年)著者の須賀敦子さん(1929-1998年)は20代から40代にかけての13年間をイタリアで暮らした方です。最初に須賀敦子さんの本を読んだとき、その美しい文章に一気に魅せられました。声に出して読んだり、文章を書き写したりしました。イタリアの家族や友人、イタリアの町々、イタリアという土地が生んだ詩人、また日本の家族のことなどを綴った文章から感じられる著者の生き方に今も惹かれています。6