ブックタイトルnarapu 08

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概要

narapu 08

The journey not the arrivalmatters.[by T.S. Eliot](旅とはどこかにたどり着くことではない)地域創造学部准教授薬師寺浩之専門分野:東南アジアの観光・持続可能な観光・観光倫理担当科目:アジア観光交流論・アジア資源論趣味など:旅行、特に海外旅行愛読書:『ユー・アー・ヒアあなたの住む「地球」の科学』早川書房(2019年刊行)ニコラス・クレイン(著)白川貴子(訳)近年の研究一言でいえば、東南アジアの観光について研究しています。今まで、タイやマレーシアにおけるバックパッカーツーリストの旅行行動、特に観光地住民が問題視する行動に関する研究、カンボジアの孤児院で行われているボランティアツーリズムの実態と課題に関する研究、さらにタイやカンボジアの被災地や戦跡などで行われているダークツーリズムの実態と課題に関する研究、などに取り組んできました。これらの研究に共通したキーワードは、観光に関わる「倫理」や「責任」です。バックパッカーツーリストの旅行行動が批判されているのであれば、善悪や正邪という行為の価値基準に踏み込む倫理的視点が重要になったり、旅行者としての責任問題が浮上したりします。さらに、ボランティアツーリズムやダークツーリズムは人や地域社会の負の側面を観光資源化したものであることから、倫理的側面から問題視する声が聞かれます。東南アジアの観光でみられる倫理的課題の理解を通して、世界の観光がより良いものになるための方策も考えています。さらに、観光という社会的な現象の理解を通して、東南アジア社会の現状や課題、将来像などを読み解くことも行っています。コロナ禍の観光教育新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴い、観光を取り巻く環境は急激に変化(悪化)し、将来を見通すことが難しくなりました。観光需要が激減してしまったコロナ禍において、どのように観光教育を行うのか、さらにどのように観光を学ぶ意義を学生に伝えるのか、試行錯誤を重ねながら教育活動を行っています。人間には、旅をする本能があると言われています。世界的に感染状況が落ち着けば、観光需要はいずれ戻るはずです。コロナ後の観光需要の回復に向けて、観光研究や教育が果たす役割は大きいです。観光教育には、「観光を学ぶ」だけでなく、「観光から学ぶ」という観点もあります。私の講義やゼミでは、観光の現状や問題・課題、さらに国内外の観光事情などを学ぶ(「観光を学ぶ」)ことはもちろんのこと、観光という社会的な現象からみえる現代の国際社会や地域社会、さらに文化や自然などのあり様を学ぶ(「観光から学ぶ」)ことも重要視しています。つまり、観光を学んで得た知識を活用して、現代社会を総合的かつ批判的に理解する能力を会得することが最終的な目標です。プロフィール2003年立命館大学文学部地理学専攻卒業、2011年英国エクセター大学ビジネススクール博士後期課程修了。PhD。立命館大学文学部地域研究学域助手、奈良県立大学地域創造学部講師を経て、2018年より現職。専門は観光学、地理学、東南アジア地域研究。愛読書『ユー・アー・ヒアあなたの住む「地球」の科学』ニコラス・クレイン自然破壊、巨大都市の形成、人口移動など地理学が扱う主題についてグローバルなスケールで俯瞰し、さらに地理学の神髄に迫る本です。地球を生かすも殺すも人間次第であることが明白となった現代において、地理学が果たす役割は重要性を増しています。本の帯に「どでかい視座を手に入れろ。」と書かれている通り、本のサイズは小さいですが壮大な主題を取り上げ、地球という星を理解できる一冊になっています。10